1.振動解析とは?
振動解析は、CAE解析のメニューの1つです。振動解析を実施することで、様々な振動に対する構造物の挙動を把握し、構造物の破壊を予防できます。それに加えて、予期せぬ過度な振動が発生する可能性を設計段階で検証することも可能です。
2.振動解析の進め方
まず、CADで作成した設計データ (CADモデル) をCAE解析ソフトウェアに取り込みます。
次に、解析対象の構造物を小さな要素に分割し、メッシュモデルを作成します。
「小さな要素」とは、この小さな一つ一つのマスのことです。
解析対象の構造物をこのように「小さな要素」に分割したものをメッシュモデルと呼びます。
メッシュモデルを作成したら、以下の項目を設定します:
● 質量または密度
● 剛性または (表面の) 形状と境界条件
● 減衰力 (構造物内部の振動エネルギーを散逸させる。時間経過とともに構造物の振幅を減少させるため、振動が永久に続くことがない。)
● 励起条件 (構造物に直接、もしくは構造物の基台に与えられる入力。構造物を振動させる。例:外力、変位など)
一般的に、振動解析 (または動解析) は3つのカテゴリーに分けられます:「モーダル解析」「周波数応答解析」そして「過渡応答解析」です。
(1) モーダル解析
時間と共に荷重が変化する動的荷重をかけられた構造物の「固有振動数※1」と、モード形状※2と呼ばれる「振動パターン」を解析します。特に構造物の共振※3を避けた設計に有用で、構造的な性能(耐力)を最適化したり、動的荷重をかけられても統一性のある構造を確保したり出来ます。
※1 固有振動数:外力を受けていない構造物が、最も容易に振動する傾向にある周波数。
※2 モード形状:構造物が固有周波数ごとに呈する、特定の変形パターン。固有モードとも呼ばれる。
※3 共振:ある構造物の固有振動数が外力と一致した際に生じる現象で、構造物による過度な振動や潜在的な故障の原因になる。
モーダル解析によって、設計のどこを修正すれば共振点※4を回避できるのかが分かります。
※4 共振が起きる周波数
(2) 周波数応答解析
この解析では、動的荷重の周波数を入力し、装置の応答がどのように変化するのか調べます。構造物に与えられる入力は、下記2点のいずれかです。
– 荷重 (加振力) …ある構造物に振動を加える力
– 強制運動加振……力ではなく、加速度・速度・変位といった指標を指定し、振動を加える
こうした入力を受けることで、構造物の応答 (加速度・速度・変位・要素の応力) が得られ、共振の起こる周波数を特定することに繋がります。
(3) 過渡応答解析
時間と共に変化する荷重、または稼働条件の突然の変化に対し、構造物や装置がどのように応答するか調べます。荷重がかかった直後、またはイベント発生直後から、装置の挙動を解析することに重点が置かれています。
振動解析を実施することで、振動試験を行う前の段階で構造物の変位や応力といった指標に関する予測が出来るため、共振を避けた設計に役立ちます。このため、強度不足による手戻り (構造物の修正や変更) を削減することが期待できます。
3.振動解析を活かした設計
振動解析を行うことで、設計した構造物が様々な振動や動的荷重に対してどのように応答するのかを把握し、故障を未然に防ぐ対策を講じることが出来ます。また、設計時には想定していなかった予期せぬ過度な振動または共振が発生する可能性も検証できます。試作品や製品の製造前に設計を見直せるのは、コンピュータ・シミュレーションならではのメリットです。試作品の製作・テスト回数を減らすことも出来るため、時間もコストも節約できます。ひいては設計プロセス全体の効率化にも繋がりますので、ぜひCAE解析を試して頂きたいと思います。
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