工場の安全機器について調べていると、
「PFH」や「PFDavg」という言葉を見かけることがあります。
この記事では、PFH について、
- 何を表す数字なのか
- どんな場面で使われるのか
- PFDavg と何が違うのか
を解説します。
まず結論:PFH とは?
PFH (Average frequency of a dangerous failure of the safety function [h–1])※とは、
「危険な故障が、どれくらいの頻度で発生するか」を表す数値です。
もう少し正確に言うと、「1時間当たりの、危険側故障の発生頻度の平均値」を意味します。

まずは、「危険側故障」という言葉から見ていきましょう。
※ IEC 61508 における規定です。
IEC 62061 では「Probability of a dangerous Failure per hour (PFHD)」、
ISO 13849 では「Average probability of dangerous failure per hour (PFHD)」と規定されています。
本記事では、IEC 61508 に基づき、PFH と表記しています。
「危険側故障」とは?
安全機器は、「危険を防ぐ」ために使われます。
たとえば:
- 人が機械に近づいたら停止する
- 扉が開いたら停止する
- 異常を検知したら停止する
などです。

ところが、安全機器も機械なので、壊れることがあります。
問題なのは、「壊れた結果、安全機能が働かなくなる」ケースです。
これを「危険側故障」と呼びます。
たとえば、
- 人が近づいたのに停止しない
- 扉を開けても止まらない
- 異常を検知できない
といった状態です。
つまり PFH は、「そのような危険な故障が、どれくらい起きやすいか」を示す数字なのです。
PFH は「時間あたり」の考え方
PFH の大きな特徴は、「時間」を基準にしていることです。
単位としては、通常「1/h」が使われます。
これは、「1時間あたり」という意味です。
ここで重要:PFDavg とは考え方が違う
ここは大切なポイントです。
PFH と PFDavg は、似ているようで、実は「見ているもの」が違います。
PFDavg は「いざという時、働けるか」
PFDavg は、「普段はほとんど働かない安全機能」で使われる考え方です。
たとえば:
- 非常停止
- 緊急遮断
- 異常時だけ作動する保護機能
などです。
これらは、通常時にはあまり働きません。
つまり、「必要になった時だけ作動する」タイプです。
そのため PFDavg では、「いざ必要になった時、ちゃんと安全機能が働くか」を重視します。
PFH は「常に働き続ける安全機能」
一方 PFH は、「頻繁に働く、または常に監視し続ける安全機能」で使われます。
たとえば:
- 常時監視している安全回路
- 頻繁に ON/OFF する安全機能
- 連続運転中に監視し続けるシステム
などです。
こちらは、「必要な瞬間だけ作動すればいい」わけではありません。
安全機能は、運転中ずっと働き続ける必要があります。
そのため問題になるのは「監視や制御を続けている途中で、危険側故障が起きないか」です。
つまり、「どれくらいの頻度で危険側故障が発生するか」を、
時間の経過を踏まえて考える必要があります。
だから PFH では、「危険な故障が、時間あたりどれくらい発生するか」を評価するのです。
PFH では「運転時間の長さ」がポイント
PFH は、たとえば「1時間あたりに、危険側故障がどれくらい発生するか」を見る指標です。
そのため、運転時間が長くなるほど、
「その間に危険側故障が発生する可能性」も増えていきます。
だから PFH では、
- そもそも壊れにくい設計
- 危険側故障を起こしにくい構成
- 異常をすぐ検知できる仕組み
などによって、「長時間運転しても、危険側故障が起きにくいこと」が重要になります。
例えば、セーフティスイッチにおける:
- 冗長化
- 自己診断
- 相互監視
- フェイルセーフ設計
などは、PFH 改善につながる代表例です。
でも、PFDavg にも「時間」は関係あるのでは?
ここで、
「でも PFDavg だって、時間が経つほど壊れやすくなるのでは?」
と思う人もいるかもしれません。
これは、とても自然な疑問です。
実際、PFDavg にも時間は関係しています。
PFDavg では「故障したまま放置される時間」が問題
たとえば、普段は待機している安全機能があったとします。
もしその安全機能が故障していても、「実際に必要になるまで気づかない」ことがあります。
すると、「いざという時に働かない」危険が出てきます。
つまり PFDavg では、
「故障したまま、どれくらい長く放置される可能性があるか」に注意が必要となるのです。
点検周期が重要になる理由
たとえば:
- 1年に1回しか点検しない
- 半年ずっと故障していた
とすると、「必要な瞬間に失敗する確率」は高くなります。
逆に:
- 毎日テストする
- すぐ故障を発見できる
なら、危険は小さくなります。
つまり PFDavg では、「故障が潜伏する時間」が問題なのです。
そのため、
- 自己診断機能
- 定期テスト
- 異常検知機能
などによって、「故障を早く発見できる仕組み」を持つ安全機能は、
PFDavg を小さくしやすくなります。
これは、「いざという時に安全機能が働かない危険」を減らせるためです。
PFH と PFDavg の「時間」の違い
ここまでを整理すると、PFH と PFDavg は、どちらも時間と関係があります。
ただし、「時間をどう見ているか」が違います。
PFH
「運転中に、危険側故障がどれくらい発生するか」を見ます。
つまり、「故障発生の頻度」を、時間の経過を念頭に置いて考えています。
(例) PFH = 1×10⁻⁷/h
これはイメージとしては、
「1時間運転するごとに、平均して10⁻⁷回の危険側故障が発生するペース」
という意味です。
言い換えると、
「1000万時間運転したら、平均1回くらい危険側故障が起きるペース」とも考えられます。
運転時間が長くなるほど、「その間に故障が起きる可能性」も増えていくため、
PFH では、「長く運転しても、危険側故障が起きにくいこと」が重要です。
PFDavg
「要求された時に、すでに故障しているかもしれない」を見ます。
つまり、「故障が潜伏している時間」が問題です。
(例) PFDavg = 1×10⁻³
これは、
「安全機能が必要になった時に、平均で1000回に1回程度、危険側故障している可能性がある」
というイメージです。
こうした理由から、PFDavg では「故障に早く気づけること」が大切なのです。
SIL との関係
PFH と PFDavg は、SIL (安全度水準) とも関係があります。
SIL では、
- どれくらい危険側故障が起きにくいか
- どれくらい安全性が高いか
を数値で評価します。
その際、「安全機能の信頼性を示す重要な指標」の1つとして、
- 頻繁に動作する安全機能
- 常時監視する安全機能
では PFH が使われ (安全機能①常に働いているタイプ)、
- 普段は待機していて、
- 必要な時だけ動作する安全機能
では PFDavg が使われます (安全機能②普段は待機しているタイプ)。
PFH の値は「小さいほど良い」
PFH は、小さいほど安全です。
なぜなら、危険側故障が起きにくいという意味だからです。
セーフティスイッチのカタログに PFH が載っている理由
セーフティスイッチのカタログで、PFH を見かけることがあります。
これは、「この製品が、どれくらい安全性に貢献できるか」を示すためです。
特に、
- ISO 13849-1
- IEC 62061
- IEC 61508
などの安全規格では、「安全機能が、どれくらい危険側故障を起こしにくいか」が重要になります。
その評価には、
- PFH
- PFDavg
などの指標が使われます。
特に、セーフティスイッチのような:
- 常時監視を行う安全機器
- 頻繁に動作する安全機器
では、PFH が用いられることがあります。
そのため、製品仕様として PFH が記載されることがあるのです。
まとめ
PFH とは、「危険側故障が、時間あたりにどれくらい発生するか」を表す数値です。
そして、PFDavg との大きな違いは、
- PFH →「運転中にどれくらい危険側故障が起きるか」
- PFDavg →「必要な時に働けるか」
という点です。
つまり、安全機能の“使われ方”によって、評価基準・指標が変わるのです。
最初は難しく感じるかもしれませんが、安全機能が
- 「常時監視型」なのか
- 「待機型」なのか
を意識すると、PFH と PFDavg の違いはかなり理解しやすくなります。



