「必要なときに安全機能が働かない確率」を表す重要な指標
「SIL (安全度水準)」を調べていると、PFDavg (平均危険側故障確率) という言葉を見かけることがあります。
PFDavg とは、「必要なときに、安全機能が働かない確率」を表す値です。
そして、数値が小さいほど、安全性が高い、という特徴があります。
PFDavg は何のための数値?
工場の機械には、人を危険から守るための「安全機能」があります。
たとえば、
- 非常停止ボタン
- セーフティスイッチ
- 安全センサ
- 安全PLC
などの安全機器が使われています。
これらは、危険が起きたときに正しく動作することで、人を守っています。
しかし、どんな機器でも、故障がゼロになることはありません。
もし安全機能が故障していたら、
- 非常停止を押しても止まらない
- 扉を開けても機械が停止しない
といった危険な状態になる可能性があります。
そこで考えなければならないのが、「安全機能は、どれくらい信頼できるのか?」という点です。
その信頼性を数値で表したものの1つが、PFDavg です。
PFDavg の意味を簡単に言うと?
PFDavg は英語で、the average Probability of Failure on Demand の略です。
日本語では、平均危険側故障確率と呼ばれます。
かなり難しそうな名前ですが、大事なのは、
「必要なタイミングで安全機能が失敗する確率」だと理解することです。
「必要なときに働かない」とは?
たとえば、非常停止ボタンを想像してみましょう。

普段は何も起きていないため、非常停止ボタンは使われません。
しかし、
- 人が危険エリアに入った
- 機械が暴走した
- 異常が発生した
といった緊急時には、確実に機械を停止させる必要があります。
ところが、その瞬間に故障していたらどうなるでしょうか。
- ボタンを押しても停止しない
- 信号が伝わらない
- 出力が切れない
という危険な状態になる可能性があります。
つまり PFDavg とは、「いざという時に失敗する可能性」を表しているのです。
数値が小さいほど安全
PFDavg は、「失敗する確率」を表します。
そのため、
- 数値が小さい → 失敗しにくい → 安全
- 数値が大きい → 失敗しやすい → 危険
という関係になります。
たとえば、
- PFDavg = 0.1
- PFDavg = 0.001
なら、0.001のほうが安全性は高いと言えます。
これは、「安全機能が失敗する可能性が低い」からです。
SIL と PFDavg の関係
SIL では、安全装置や安全システムが「どれくらい安全か」を段階的に分類します。
そこで使われる重要な数値の1つが、PFDavg です。
SIL が高くなるほど、より小さい PFDavg が求められます。
つまり、
- SIL1 より SIL2
- SIL2 より SIL3
の方が、「安全機能が失敗しにくい」ことを意味しています。

なぜ「平均」という言葉が付くの?
PFDavg には、「avg (average)」という言葉が入っています。
これは、「ある期間の平均的な失敗確率」を意味しています。
安全機器は、定期点検や定期テストを行いながら使われます。
たとえば、
- 半年ごと
- 1年ごと
に点検を実施するとします。
点検直後は正常でも、時間が経つと故障している可能性は少しずつ増えていきます。
PFDavg は、「前回の点検から、次の点検までの間における平均的な危険側故障確率」を表しています。
PFDavg は「ゼロ」にはならない
ここで重要なのは、
どんな安全機器でも、故障確率をゼロにはできない
という点です。
どれだけ高性能な安全機器でも、
- 部品の劣化
- 配線トラブル
- 接点不良
- 電子部品の故障
などは起こり得ます。
そのため SIL の世界では、「故障しない機械」ではなく、
「故障確率を十分小さくする」という考え方をします。
PFDavg は、その考え方を数値化したものと言えます。
MTTFd との違いは?
PL (Performance Level) に触れたことのある人は、
「PFDavg って、MTTFd と似たようなもの?」
と感じるかもしれません。
確かに、どちらも安全性に関係する数値です。
しかし、意味は異なります。
- MTTFd は「危険側故障が起きるまでの平均時間」
- PFDavg は「必要なときに安全機能が働かない確率」
を表します。
つまり、
- MTTFd → どれくらい壊れにくいか
- PFDavg → 必要な時に失敗しにくいか
という違いがあります。
まずは「失敗する確率」だと理解すればOK
PFDavg という言葉は難しく見えますが、
まずは「必要なときに安全機能が働かない確率」と理解できれば十分です。
そして、
数値が小さいほど安全
という点を押さえておけば、SIL の理解がかなり進みます。
今後 SIL をさらに学んでいくと、SFF (安全側故障率)、HFT (ハードウェア故障許容度) などの言葉も出てきます。
しかし、その中心には常に、「安全機能は、本当に必要なときに働くのか?」という考え方があります。
PFDavg は、その考え方を表す代表的な指標の1つなのです。


