機械の安全について調べていると、「DCavg (平均診断範囲)」という言葉が出てきます。
さらに読み進めると、「Performance Level (PL)」という別の指標も登場し、
だんだん難しく感じてしまうかもしれません。
しかし、この2つはバラバラの話ではなく、しっかり繋がっている考え方です。
順番に見ていきましょう。
DCavg (平均診断範囲)
まず、DCavg を一言でいうと、
「機械が自分に起きた危険側故障のうち、自力でどれくらい気づけるかの割合」です。

機械は使っているうちに、いろいろなトラブル (故障) に見舞われます。たとえば、
- センサが反応しなくなる
- 配線が切れる
- スイッチが壊れる
こうした異常が起きたときに、装置がそれを自分で検知 (診断) できるかどうかが重要になります。
たとえば、10回故障が起きたときに、
- 9回は検知できた → DCavg 90%
- 5回しか気づけなかった → DCavg 50%
というイメージです。
つまり、DCavg は「どれくらい見逃さずに異常を見つけられるか」を数字で表したものです。
なぜ大事なの?
ポイントは、「故障そのもの」よりも「故障に気づけるかどうか」です。
なぜなら、故障に気づかないまま使い続けると、事故につながる可能性があるからです。
たとえば、
- ドアが開いているのに機械が止まらない
- センサが効いていないのに動き続ける
こうなると、とても危険ですよね。
逆に、故障をすぐ検知できれば、
- 機械を止める
- アラームを出す
といった対応ができ、事故を防ぐことができます。
DCavg が高いほど安全?
基本的には、その通りです。
- DCavg が低い → 故障を見逃しやすい
- DCavg が高い → 故障を見つけやすい
一般的な目安としては、
- 60%未満 : なし
- 60%以上90%未満 : 低い
- 90%以上99%未満 : 中くらい
- 99%以上:高い
といった分類がされることが多いです。

Performance Level (PL) とは?
次に PL です。PL は、「その安全機能がどれくらい信頼できるか」を示すランクです。
- PL a (低い)
- PL b
- PL c
- PL d
- PL e (高い)
と分かれており、eに近いほど安全性が高いとされています。
PL は何で決まるのか?
PL は、主に次の3つの要素で決まります。
- MTTFd (壊れにくさ)
- カテゴリ (構造の安全性)
- DCavg (故障を見つける力)
このうち DCavg は、「異常に気づける力」を担当する要素です。
DCavg が PL に与える影響
ここが一番大事なポイントです。
DCavg が高いほど、高い PL を達成しやすくなります。
なぜなら、
- 検出可能な危険側故障の割合が増える
- 検出不能な危険側故障の割合が減る
からです。
その結果、安全機能の信頼性向上に繋がります。
たとえば、
DCavg が低い場合
- 異常に気づかないことが多い
- 危険側故障が見逃されやすい
→ PL は上がりにくい
DCavg が高い場合
- 異常を検知できる範囲が広い
- 危険側故障を見逃しにくい
→ 高い PL (dやe) を目指せる
ただし「DCavg だけ」では決まらない
ここは誤解しやすいポイントです。DCavg が高ければ必ず PL が高くなるわけではありません。
たとえば、
- 部品が壊れやすい (MTTFd が低い)
- 構造がシンプルすぎる (カテゴリが低い)
このような場合、いくら検知能力が高くても、全体としての安全性は十分とは言えません。

イメージでまとめると
PL は「総合評価」です。
- MTTFd : 壊れにくさ
- カテゴリ : 構造の強さ
- DCavg : 異常に気づく力
この3つがバランスよく揃って、はじめて高い PL が実現します。

DCavg を高めるには?
DCavg を高くするには、「異常検知 (診断) の仕組み」を増やします。
たとえば、
- 定期的にテスト信号を使って異常をチェックする
- 入力と出力を見比べる (クロスチェック)
- 同じ動きをする2つの回路で、互いに監視させる
こうした工夫により、故障の見逃しを減らす (異常に気づける確率を上げる) ことができます。
こうした仕組みは、実際の安全機器にも使われています。
たとえば、セーフティスイッチの診断能力は製品によって異なりますが、
内部に二重化と相互監視機能を備えたタイプであれば、
安全機能全体の「異常に気づく力」を高めることに貢献できるため、
高い PL に対応する安全機能の構築に寄与します。
まとめ
DCavg (平均診断範囲) は、
「機械が自分に起きた危険側故障のうち、自力でどれくらい気づけるかの割合」です。
安全な機械をつくるためには、「壊れにくいこと」だけでなく、
「壊れたときにちゃんと気づけること」もまた、とても大切なのです。
そして Performance Level (PL) は、「その安全機能がどれくらい信頼できるか」を示します。
この2つの関係はシンプルで、
DCavg が高いほど、より高い PL を目指しやすくなります。
ただし、PL は DCavg だけでなく、壊れにくさ (MTTFd) や構造 (カテゴリ) とのバランスで決まる
という点が重要です。
補足 : DC と DCavg の違い
- DC (診断範囲) : ある1つの故障に対して、どれくらい検出できるか
- DCavg (平均診断範囲) : いろいろな故障をまとめた平均的な検出力
たとえば、ある装置に3種類の故障があるとします。
| 故障の種類 | 検知できる割合 (DC) |
| 配線断線 | 100% |
| センサ故障 | 80% |
| 接点溶着 | 40% |
このとき、それぞれの「個別の検出能力」(100%、80%、40%) が DC です。
でも実際には、「装置全体としてどれくらい見つけられるの?」という評価が必要になります。
そこで、これらを平均したものが DCavg です。
(※実際は単純平均ではなく、故障の起こりやすさも考慮しますが、
イメージとしては平均で大丈夫です。)
やや極端なたとえですが:
- DC : テストの各教科の点数 (数学80点、英語60点…)
- DCavg : 全体の平均点 (70点)
のような関係です。
つまり DCavg は、装置全体としてどれくらい優秀に異常を見つけられるかを表しています。


