工場の機械では、人の安全を守るためにセーフティスイッチが使われています。
たとえば、扉を開けたときに機械が自動で止まる仕組みです。

では、そのセーフティスイッチが「どれくらい安全なのか」は、どうやって判断するのでしょうか?
そこで使われるのが「MTTFd」という指標です。
MTTFdを一言でいうと?
MTTFd とは、「安全機能を担う部品や機器等に危険な故障が起こるまでの
平均時間 (Mean Time To Dangerous Failure)」を表す数値です。
ここでいう「危険な故障」とは、安全機能が働かなくなる故障です。
たとえばセーフティスイッチであれば、
- 正常:扉を開けると機械が止まる
- 危険な故障:扉を開けても機械が止まらない
という違いになります。
「平均時間」とはどういう意味?
ここが少し分かりにくいポイントです。
MTTFd の「平均」とは、「同じ部品をたくさん使ったとき、
どれくらいの時間で危険な故障が起こるかを、全体として平均したもの」という意味です。
イメージしてみてください。同じセーフティスイッチを100個用意して、それぞれ使い続けたとします。
- 5年で壊れるもの
- 10年で壊れるもの
- 20年持つもの
など、ばらつきが出ます。
このとき、それらを全部まとめて平均すると「だいたい何年くらいか」が分かります。
それが MTTFd です。
つまり、
「この製品は必ず○年で壊れる」という意味ではなく、
「たくさん使ったときの傾向として、これくらいの時間で危険な故障が起こる」という考え方です。
これが「統計的な値」と呼ばれる理由です。
数値が大きいほど安全?
MTTFd は年 (years) で表され、数値が大きいほど壊れにくいことを意味します。
- MTTFd = 10年 → 比較的壊れやすい
- MTTFd = 100年 → とても壊れにくい
ただし、ここで注意が必要です。
数値が大きくても「絶対に壊れない」わけではありません。
あくまで平均の話なので、早く壊れる場合もあります。
このため、安全設計では「1つの部品だけに頼らない」ことが重要になります。
MTTFdのレベル分け
実務では、MTTFd は次の3つのレベルに分けて扱われます。
- Low (低い):3年以上 10年未満
- Medium (中程度):10年以上 30年未満
- High (高い):30年以上 100年未満
※100年を超える場合は、通常は100年として扱われます。
この分類によって、「どの程度信頼できる部品か」を大まかに判断します。
PL (Performance Level) との関係
MTTFd はそれ単体で使われるだけでなく、
「PL (Performance Level)」という安全レベルの評価にも使われます。
PLは、a〜e の5段階で表され、
- PL a:低い
- PL e:非常に高い
となります。
PLごとに求められるMTTFdの目安
PL は MTTFd だけで決まるわけではありませんが、重要な要素のひとつです。
大まかには、次のような関係があります。
- PL a〜b:Lowでも成立可能
- PL c:Mediumが目安
- PL d:Highが必要になることが多い
- PL e:Highが前提 (かつ他の条件も厳しい)
つまり、「高い安全レベル (PL dやe) を目指すには、
MTTFd が高い部品を使うことが前提になる」ということです。
なぜMTTFdだけでは足りないのか?
ここで大事なポイントです。
MTTFd は「部品の壊れにくさ」を表しますが、それだけで安全が決まるわけではありません。
たとえば、
- 壊れてもすぐ検出できるか
- 同じ機能を2重にしているか (冗長性)
といった設計も重要です。
極端な例を考えると、
- とても壊れにくい部品でも
- 壊れたときに気づけなければ危険
です。
そのためPLは、「部品の信頼性 (MTTFd) +設計の工夫」を組み合わせて決まります。
まとめ
MTTFd のポイントは以下の通りです:
- 危険な故障が起こるまでの平均時間
- 多くのサンプルをもとにした「統計的な値」
- 数値が大きいほど壊れにくい
- Low / Medium / Highに分類される
- PL (安全レベル) を決める重要な要素のひとつ
最後に
安全機器の世界では、「たぶん大丈夫」ではなく、「数値で安全性を考える」ことが重要です。
MTTFd はその基本となる「壊れにくさの指標」です。
さらに PL と組み合わせることで、設備全体の安全性を評価できるのです。
―参考文献―
ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会
『協働ロボットの安全解説書~ロボットを使用した協働作業の実現に向けて~』(2023年3月)
https://www.jmfrri.gr.jp/wp-content/uploads/2024/12/wg2_anzen.pdf


