安全度水準 (SIL) は「事故を防ぐ仕組みの信頼性を示す指標」
工場の機械や鉄道、発電所などでは、事故を防ぐためにさまざまな安全装置が使われています。
たとえば、人が危険な場所に入ったときに機械を止めるセンサや、
異常が起きたときに設備を停止させるシステムなどです。
しかし、もしその安全装置が故障してしまったらどうなるでしょうか。
安全を守るはずの装置が働かなければ、大きな事故につながる可能性があります。
そこで使われているのが、安全度水準 (SIL: Safety Integrity Level) という考え方です。
SILとは、安全装置や安全システムがどれくらい確実に働くか (どれくらい信頼できるか) を示す指標です。簡単に言えば、「その安全機能がどれくらい事故を防いでくれるか」をレベルで表したものです。
SILは4つのレベルに分かれている
SILには、次の4つのレベルがあります。
- SIL1:基本的な安全レベル
- SIL2:より高い安全レベル
- SIL3:かなり高い安全レベル
- SIL4:非常に高い安全レベル
数字が大きいほど、安全機能が失敗する確率は低くなります。
つまり、SIL4がもっとも厳しい安全レベルということです。
ただし、すべての設備にSIL4が必要なわけではありません。
事故が起きたときの危険の大きさによって、必要なレベルは変わります。
SILはどのように決めるのか
SIL は、単に「危なそうだから高くする」というような感覚で決めるものではありません。
一般的には、次のような要素をもとにリスクを評価して決めます。
- 事故が起きた場合の被害の大きさ
- 危険な状況がどれくらいの頻度で起こるか
- 人が危険を回避できる可能性
- 危険な状態にどれくらいの時間さらされるか
このような要素をもとにリスクを分析し、「どれくらい安全機能の信頼性が必要か」を決めます。
そして、その結果として必要なSILが決定されます。
たとえば、事故が起きると多くの人命に関わるような設備では、
SIL3 や SIL4 のような高い安全度水準が必要になります。
一方、被害が比較的小さい場合には、SIL1 や SIL2 で十分な場合もあります。
このように SIL は、危険の大きさに応じて必要な安全レベルを決めるための仕組みなのです。
機械分野ではPLという指標も使われる
機械の安全を考える場合、SIL とよく比較される指標として PL (Performance Level) があります。
PL は、主に機械の安全規格で使われる考え方で、安全機能の信頼性をa〜eの段階で表します。
- PL a:低い安全レベル
- PL b
- PL c
- PL d
- PL e:非常に高い安全レベル
PL も SIL と同じように、安全機能がどれくらいの確率で失敗するかという考え方に基づいています。
つまり、どちらも「安全機能の信頼性」を評価するための指標です。
ただし、使われる分野に違いがあります。
- SIL:プラント、プロセス産業、鉄道など
- PL:産業機械 (機械装置の安全)
そのため、機械メーカーでは PL が使われることが多く、
安全機器のカタログでもPL表示をよく見かけます。
SILとPLで使われる分野が異なる理由
PL は、主に機械の安全規格 (ISO 13849) で使われており、
1台の機械の中で安全をどう確保するかに向いています。
たとえば、セーフティスイッチ、リレー、センサといった部品を組み合わせて安全を作る考え方です。

これに対し、SIL はもともとプラントなど、
大きなシステム全体の安全を考えるために作られた指標です。
たとえば、工場の生産ライン全体、化学プラント、発電所といった、
複数の装置が繋がった大規模な仕組みです。
SIL では、「システム全体として、どれくらい事故を防げるか」を重視するのです。

安全を「数値」で考える時代
昔は、安全設計は経験や勘に頼る部分も多くありました。
しかし現在では、事故を防ぐためにリスクを分析し、安全を数値で評価する考え方が
広く使われています。
SIL や PL は、そのための重要な指標です。
これらの考え方によって、安全装置がどれくらい信頼できるのかを
客観的に判断できるようになりました。
工場やインフラの安全を守るうえで、SIL や PL はとても重要な役割を果たしているのです。
―参考文献―
中央労働災害防止協会『機能安全をご存じですか !?機能安全が可能にする機械の安全確保』(平成28年3月)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000117706.pdf


