セーフティスイッチの「感応距離」と、定格値・保証値の考え方
工場や機械には、人がケガをしないようにするためのセーフティスイッチという装置があります。
これは、ドアやカバーがきちんと閉まっているかを見張り、危険な状態では機械が動かないようにするための、大切な部品です。
このセーフティスイッチを説明するときに、よく出てくる言葉が「感応距離」、「定格値」、そして「保証値(ON/OFF)」です。
感応距離
感応距離とは、セーフティスイッチの受信ユニットが、送信ユニットが「近づいた」と感じて反応できる最大の距離のことです。
たとえば、磁石を使うセーフティスイッチでは、磁石を内蔵した送信ユニットを受信ユニットにある一定の距離まで近づけると、「機械の扉は閉まっている」と受信ユニットが判断します。
このとき、どこまで離れていても反応できるか、それを示すのが感応距離です。
ただし、感応距離にはいくつか種類があります。その中で、特に大切なのが定格値と保証値です。
感応距離の「定格値」と「保証値」
定格値は、「このくらいの距離で使うことを想定しています」という、目安となる距離です。カタログなどに書かれている感応距離は、多くの場合、この定格値を指しています。
一方で、実際の感応距離にはセーフティスイッチひとつひとつ、個体差があります。そこで重要になるのが、保証値です。
保証値には、
- ONの保証値
- OFFの保証値
があります。
ONの保証値とは、「受信ユニットと送信ユニットがこの距離以内にあれば、必ずONになると約束できる距離」です。この距離まで近づけば、セーフティスイッチは確実に「扉が閉じている」と判断します。
反対に、OFFの保証値とは、「受信ユニットと送信ユニットがこの距離以上に離れれば、必ずOFFになると約束できる距離」です。この距離まで離れれば、セーフティスイッチは確実に「扉が開いている」と判断します。
なお、ONになる距離とOFFになる距離には差があり、この差をヒステリシスと呼びます。どういうことか、具体例で考えてみましょう。
ヒステリシス
磁石内蔵の送信ユニットが近づいて、ある距離まで来ると、受信ユニットの状態は「ON (閉)」になります。ところが、そのあと送信ユニットが受信ユニットから少し離れただけでは、すぐに「OFF (開)」にはなりません。もう少し離れてから、「OFF (開)」に切り替わります。
この
- ON (閉) になる距離
- OFF (開) になる距離
の差が、ヒステリシスです。
なぜ、このような仕組みが必要なのでしょうか。
もしヒステリシスがなかったら、機械の扉がわずかに振動しただけでONとOFFが何度も切り替わってしまいます。それでは機械の動作が不安定になり、とても危険です。
ヒステリシスがあることで、ドアが少しガタついたり、振動などで受信ユニットと送信ユニットの位置関係が少しズレても反応しない (ONとOFFが何度も切り替わったりしない) ようになり、その結果、セーフティスイッチは安全で安定した動作ができるのです。
では、ユーザーはこれらの値をどう使うのでしょうか。
セーフティスイッチの選定に、設置時の判断に
セーフティスイッチを選ぶとき、ユーザーは「どのくらいの距離で確実にON/OFFしてほしいか」を考えます。その判断材料になるのが、感応距離の定格値と保証値です。
これらの値は、実際にセーフティスイッチを設置する際にも重要です。受信ユニットと送信ユニットの間の距離を、ONの保証値より十分に近くなるように取り付ければ、ドアが正しく閉まったときに確実にON信号が出るようになります。
逆に、OFFの保証値を意識することで、ドアが開いたときに確実に機械が止まる設計ができます。
このように、
- 感応距離=「どこまで離れていても反応できるか」
- 定格値
- 保証値 (ON/OFF)
- ヒステリシス=「反応を安定させるための余裕」
はすべてつながっていて、人の安全を守るための判断基準になっています。
「なぜこの値が必要なのか」「どう使われるのか」を理解することは、セーフティスイッチを正しく使う第一歩となります。



